超時空要塞マクロスII -Lovers, Again-
「超時空要塞マクロスII」は1992年に販売された6話構成のOVAです。初代のTVシリーズ「超時空要塞マクロス」は1982年放送開始、劇場版「愛・おぼえていますか」は1984年に公開されました。つまり「超時空要塞マクロスII」は初代から10年目という区切りで製作されたことになります。ただし、スタジタぬえはあくまでもサポートであり、制作はAICとオニロが行ないました。そして1994年(劇場版公開10年後)にMACROSS
PLUSが、1995年にマクロス7が制作されるにつれ、「超時空要塞マクロスII」はあくまでも「パラレルワールド」「外伝」といった位置づけとされています。なぜそうなったのでしょうか。
実は当時、アニメ業界では原作ものの焼き直しが盛んに行なわれていたのです。ガンダムでは初代とZをつなぐ外伝「機動戦士ガンダム0083〜STARDUST
MEMORY〜」が制作されました。「マクロスII」の後に、マクロスに続く超時空シリーズ「超時空世紀オーガス」の外伝「オーガス02」も作られました。エイトマンの外伝である「エイトマンアフター」が作られたのもやはり1992年です。オリジナルの設定を借りて、まったく新しい機体、世界観で物語を作ることが流行した。そんな時代背景があったからこそ、「超時空要塞マクロスII」は生み出されたのです。
登場するマクロス艦にはアームド1・アームド2が装備され、マッシュがイシュタルをメルトランと呼んだりしていることから、ベースは「愛・おぼえていますか」だと思われます。
「超時空要塞マクロスII」は、初代マクロスから80年後を舞台にしています。登場するバルキリーは宇宙用のVF2-SSバルキリーIIと大気圏内用のVF-2JAイカロス。そして劇中で最新鋭機METALSIREN(メタルサイレーン)がロールアウトされます。
このへんで不自然に思われるでしょう。初代から35年程度後のMACROSS PLUSやマクロス7では19や22(21)といった高い番号が振られています。なのにそこから約45年後、再び2まで戻ってしまうのです。が、これは現実の戦闘機でも実際に起こっている、ある程度番号が出たらまた最初から番号を振りなおす、ということが起きているとも解釈できます。
VF2は基本的にVF-1に近いのですが、若干VF-19や22のシルエットがクロスオーバーします。とくにイカロスのガウォーク形態はVF-19のものと酷似しています。
さらに最新鋭機METALSIRENは可変翼がとても大きく、VF-19の前進翼よりも最新テクノロジーである機体全てが翼の形をした「全翼型胴体」に近い形状をしています。そう考えると、一概に「パラレルワールド」と片付けてしまうのももったいない話ですね。
歌の視点から検証してみましょう。「マクロスII」で登場する歌の多くは「マクロス7」でも登場しています。「恋のバナナムーン」や「バルキリーで誘って」、「そこにあるのが未来だから」はすべて「マクロスII」が初出です。サックスだけですが「今は友達」も演奏されているので(「マクロスダイナマイト7」で歌も登場します)、ウェンディ・ライダーなどは結果的に懐メロを歌っていた可能性もあるのです。
このことから考えれば、「超時空要塞マクロスII」はマクロス7の時代設定である2045年に制作されたドラマかアニメではないかとも考えられます。そしてウェンディ・ライダーたちが歌った歌は、その当時に流行っていた歌をフューチャリングしたものなのではないでしょうか。そう考えると荒唐無稽なストーリー展開も納得できますしね。
キャラクター紹介
グッズ紹介
ストーリー・ダイジェスト
EPISODE:1 コンタクト(CONTACT)
テレビ局SNN(5ch)に勤める特ダネを狙う売れっ子レポーター・神崎ヒビキは、統合軍のスキャンダルを素破抜いた。ターゲットはSNNの「お嫁さんにしたい人ファン投票」で芸能人・スポーツ選手などをしのいでトップに立つシルビー・ジーナ中尉。しかしSNNに帰ったヒビキを待っていたのは、軍からの圧力であった。
そんなとき、突然統合軍が火星軌道で10年ぶりに敵と戦闘状態に突入。バルキリーライセンスを持つヒビキは、戦場レポーターのデニス・ローンを乗せて初めての戦場へと飛び立った。統合軍は敵をはぐれゼントラーディーと判断してオペレーション・ミンメイを発動する。圧倒していくかに思われた統合軍であったが、敵からも歌が聴こえてきたため混乱状態に突入し、戦場は混迷を深めた。
デニスの指示で敵戦艦に飛び込んだヒビキのバルキリー。艦内で気絶しているマイクローンの少女を発見するのだった。少女を連れ帰ろうとするデニスは爆風にやられて息絶え、ヒビキは少女を連れて地球へと帰還するのであった・・・。
【使用歌リスト】
13:12 恋のバナナムーン(佐藤有香(オペレーション・ミンメイ歌手))
EPISODE:2 イシュタル(ISHTAR)
デニスが残した記録ディスクは、敵が歌を持っている事実を知らせることになるだろう。そう考えていたヒビキの心は裏切られた。シルビー率いる「フェアリーリーダー」とネックス大尉のバルキリー隊の活躍シーンばかりを繋ぎ合わせた映像となっていたのである。統合軍の検閲が入ったのだ。
連れ帰った少女・イシュタルを今報道しようとしてもすぐに抹消されてしまうだろうと判断したヒビキ。エネルギー暴走するマクロス艦に興味を持ったイシュタルは部屋を抜け出して街へと出てしまう。なんとか連れ戻したヒビキは彼女をカルチャーパーク「カルチューンプラザ」へ連れてきた。地球の文化を学んだ彼女がどう変わっていくかを記録することで軍を見返してやろうと画策する。
そんな最中、ヒビキとイシュタルは統合軍と敵の戦闘に巻き込まれてしまう。シルビーに助けられたヒビキたちの前に、ギガメッシュで駆けつけたフェフが現れた。イシュタルに迫り、ヒビキを狙うフェフの前にネックスのイカロスが駆けつけ、その場はやり過ごせたのである・・・。
【使用歌リスト】
3:56 今は友達(インストのみ)
11:30 バルキリーで誘って(佐藤幸世)〜de・Ja・vu〜そばにいて(金子美香)〜バルキリーで誘って(佐藤幸世)
EPISODE:3 フェスティバル(FESTIVAL)
統合軍のMOON FESTIVALに興味をもったイシュタル。マクロス艦を「アルスの舟」として慕う彼女は、マクロスの中でなら真実を話すと告げた。そこでイシュタルが告げた事実。それは、イシュタルはイミュレーターと呼ばれる歌巫女であり、マルドゥークと呼ばれる種族がゼントラーディーを操って敵を滅ぼしてきたという。その場に居合わせたシルビーはイシュタルの身柄引き渡しを要求するが、ヒビキは断固として拒否する。ヒビキは地球の文化に触れて変わっていくイシュタルに可能性を見たのである。
MOON FESTIVALにやってきたイシュタルは、ウェンディ・ライダーの歌に聞き惚れていた。地球にはさまざまな歌がある。その中でもイシュタルの心をとらえたのは「今は友達」という恋の歌である。
ショーが終わりに差し掛かり、ウェンディーはシルビーのメタルサイレーン・レプリカへと乗り込み体験飛行をする……はずであった。そこへフェフ率いるマルドゥーク軍がウェンディー捕獲のために動き出したのである。シルビーとウェンディを救うために、ヒビキとイシュタルは交換条件としてマルドゥーク艦へと連れ去られるのであった・・・。
【使用歌リスト】
2:40 バルキリーで誘って(佐藤幸世)
11:30 バルキリーで誘って(佐藤幸世)
14:45 今は友達(佐藤幸世)
EPISODE:4 マルドゥーク・ディスオーダ(MARDOOK DISORDER)
マルドゥーク艦内でヒビキは拷問を受けて牢獄へ囚われてしまう。そしてイシュタルは旗艦サーライドに連れて行かれ、エリンシェによるアルス・ノヴァの洗礼を受けることとなった。
ヒビキは洗脳されようとしていたが、助けにきたシルビーによって自由の身となる。艦内を走り回ったヒビキたちが見たもの、それは洗脳されるゼントラーディーの姿であった。彼らは自分たちの意志とは関係なく戦わされていたのだ。
イシュタルに発信機をつけていたヒビキはシルビーとともに旗艦サーライドへと急ぐ。ヒビキと地球で作った恋の歌に対する気持ちからアルス・ノヴァの洗礼を拒み続けるイシュタル。地球で覚えた恋の歌を歌うイシュタルであったが、敵文明と接触したことを知った独裁者イングスがサーライドへと制裁を下すのであった。
ようやくイシュタルの元へとたどり着いたヒビキたちであったが、彼らを追ってきたフェフが先にイシュタルを確保してしまう。仕方なくフェフの猛攻の中を全速で逃げるバルキリー。ようやく脱出したヒビキたちの後ろには制裁によって無残にも破壊されたサーライドが漂っていた・・・。
【使用歌リスト】
5:08 もう一度LOVE YOU(オルゴール) この回から登場するペンダントのオルゴールから流れています。つまりこの時点でこの歌のメロディーは完成していたことになります。
17:05 今は友達(イシュタル/ハミング)
EPISODE:5 ステーション・ブレーク(STATION BREAK)
地球に帰ってきた二人。シルビーはエクセグラン司令と今後について話し合った。マルドゥークと対するにはイミュレーターとしてのイシュタルの可能性に賭けてみるというヒビキの考えに共感する部分があったからだ。
一方、ヒビキは軍の緊急回線をジャックして敵であるマルドゥークの情報を市民に報道した。当然統合軍は即座に彼を拘束する。ヒビキとシルビーは3日間の留置処分とされる。その最中にも戦いは激化の一途をたどる。
マクロスキャノン4機をもってマルドューク艦隊を倒したかに見えたが、すぐ近くに艦隊をデフォールドさせられて火星軌道上のバルゼー艦隊は苦境に立たせられた。ネックスもメタルサイレーンで救援に赴いたが、マルドゥーク軍は死の歌をもっていともたやすく戦艦グロリア率いるバルゼー艦隊を突破していった。もはや地球の最終防衛ラインは目前である。
フェフは、歌を歌わなくなったイシュタルを艦から降ろすことを決めた。反逆してフェフに撃ち殺されたことにしてである。戦士として忠誠を誓ったフェフは、イシュタルとの生まれの違いを悔やんだ。地球へと向かうイシュタルは戦いを終わらせるために歌うことを決意するのであった・・・。
※4:18に宇宙の騎士テッカマンブレードの主人公Dボゥイが出てきます。
【使用歌リスト】
21:55 あなたを感じている−ミア・センテス・レン−(笠原弘子)
EPISODE:6 シング・アロング(SING ALONG)
敵は最終防衛ラインを突破しにかかっていた。そんな中、シルビーはヒビキを救出すると、敵母艦を射抜くための最後の切り札「アルスの舟」ことマクロス艦へと急いだ。エクセグラン司令はネックス大尉とフェアリー隊に第2キャノンベースへ行くよう伝えた。シルビーとともに対母艦用の戦力を増強するためである。
大気圏内へと降下してくる敵機動兵器。敵母艦も今や肉眼で確認できるほどである。そんな中でヒビキとシルビーが出撃準備を進めるマクロス艦内にイシュタルは乗り込んだ。そしていよいよ、人々の期待を載せてマクロスが浮上する。
母艦座標を受け取ったシルビーとヒビキはマクロスの全砲門を敵母艦へと向けて一斉射する。
しかし敵母艦はびくともしなかった。次々と破壊されていく地球の文明。それを目の前にして落胆するシルビーを慰めるヒビキ。二人はこの瞬間に分かり合えたのだ。
その光景を見ていたイシュタルは、分かり合い互いを結ぶ力こそがアルスのパワーであり、恋なのだと気づく。そしてイシュタルは全軍に対して分かり合おうと訴えるが、それを拒否するイングスはマクロス艦に母艦の主砲を打ち込み粉砕する。イシュタルの訴えに同調するイミュレーターも現れるが、ことごとくイングスの制裁が加えられていく。
同士討ちをするマルドゥーク。ヒビキからもらったペンダントに勇気づけられて、イシュタルは歌いだした・・・恋の歌を・・・。
イシュタルの優しさがすべての人々に伝わり、両軍の全砲門が独裁者イングスへと向かい、彼を打ち滅ぼすのであった。
終戦の時は来た・・・。マルドゥークは破壊ではない新たな文化を手に入れるため、再び宇宙へと出航する。ヒビキはイシュタルに、彼女のことを記録したディスクをプレゼントした。イシュタルはシルビーに一言言い残して艦に乗り込んだ。「シルビー、ヒビキをお願い。素敵なライバル」と・・・。
マルドゥークは新たな文化を手に入れるだろう。しかし、本当の文化を探さなければならないは我々なのではないだろうか。
【使用歌リスト】
19:04 もう一度LOVE YOU(笠原弘子)
24:45 約束(笠原弘子)
主要スタッフ
制作:AIC、オニロ
メカニックコンセプト、デザイン協力:スタジオぬえ
監督:八谷 賢一
キャラクターデザイン:美樹本 晴彦
メカデザイン監修:大畑 晃一
コンセプトデザイン:渡部 隆
美術監督:中原 英統
撮影監督:小西 一廣
シリーズ構成:富田 祐弘
音響監督:本田 保則
音楽:鷺巣 詩郎